「夜なかなか寝つけない」「朝起きるのがつらい」などの悩みを抱えている方は、体内時計が乱れている可能性があります。
古来より自然のリズムに合わせて生きてきた人間には、体内時計が備わっています。今は朝、今は夜というように、体内時計の時刻をきちんと合わせることで、入眠がスムーズになり、朝もスッキリ起きられるようになるのです。
睡眠の質が低下すると、髪の毛の成長に必要な成長ホルモンが正常に分泌されない可能性が高まり、白髪や、AGAなどの薄毛のリスクが上がります。
そこで今回は、体内時計の概要と時刻が乱れる原因、体内時計のリセット方法、生体リズムを整える1日の過ごし方などについてご紹介します。
体内時計とは
体内時計とは、人の身体に備わった1日(24時間)周期でリズム信号を発振する体内の仕組みのことです。
人間を含めた生物は、地球の自転による24時間周期や昼夜変化に同調し、体内環境を整える仕組みを有しています。
たとえば、体温やホルモン分泌など、身体に備わった基本的な機能は、約24時間周期のリズムを示すことが明らかになっています。
このリズムは、概(おおむね)1日周期という意味から概日リズム(サーカディアンリズム)と呼ばれています。
概日リズムによって生物は体内に時計機構を有していることが明らかとなり、これを体内時計(生物時計)と呼んでいます。
身体中の体内時計を指揮するコントロール室は、脳内の視交叉上核(しこうさじょうかく)と呼ばれる神経核にあります。
これを「主時計(親時計)」と言い、朝に太陽の光を浴びることで調節されて心臓や肝臓、腎臓など、身体のあらゆる場所にある「末梢時計(子時計)」のリズムも整えていくのです。
体内時計が整えば睡眠の質がグッとアップ!
髪は寝ているときに一番よく伸びます。そのため育毛のためには質の良い睡眠は切り離せない重要性があります。
質の良い睡眠を得るためには体内時計が正常に保たれていなければなりません。
体内時計が正常な場合は、夜になるとメラトニンと呼ばれる眠気ホルモンが分泌され、日中はセロトニンと呼ばれるホルモンが変わって多く分泌され働きます。
このバランスが乱れると自律神経失調症や不眠症などを引き起こす原因になります。
高齢者は朝が早く、夜中に何度も目が覚めてしまいますがこれは何故でしょう?
これは加齢に伴って「メラトニン」が不足していくことが原因とされます。
「メラトニン」とは睡眠を促すホルモンです。
血流によって体のすみずみまで時間の情報を運んでいく役割をしています。睡眠ホルモンや時計ホルモンともいわれますが、育毛・薄毛対策の為に質の良い睡眠をとれるか否かは、このメラトニンにかかっている訳です。
睡眠の質が上がれば髪は生えてくる~成長ホルモン~
髪や肌の成長に必要なホルモンは、入眠後~3時間の間にもっとも多く分泌されます。
一回の睡眠でもっとも眠りが深くなるのも入眠後~3時間なので、この時間の睡眠の質が髪の健康を大きく左右すると言えるでしょう。
成長ホルモンの分泌量は、入眠後3時間がピークとなり、その後数時間かけて全身をめぐります。
成長ホルモンが分泌されると、IGF-1(インスリン様成長因子1)という物質が生成されます。
IGF-1には、次のような働きがあります。
毛母細胞の増殖を促進
血行改善
髪のタンパク質量の増加
抗炎症作用
これらの働きは全て、太くて長い健康な髪をつくり、健やかな頭皮環境を維持するのに欠かせないものです。
IGF-1は、成長ホルモンの刺激によって生成されます。
これはつまり、成長ホルモンがなければ、育毛に必要なIGF-1が生成されないということです。
成長ホルモンは、入眠開始から3時間の間にもっとも多く分泌されるので、薄毛にお悩みの方は、成長ホルモンの分泌に必要な質のいい睡眠を意識することが大切です。
夜10時~深夜2時に成長ホルモンが出るは嘘?
夜10時~深夜2時のことを、「睡眠のゴールデンタイム」と呼ぶことがありますが、実はこの説に化学的な根拠はありません。
というのも、就寝時刻が夜10時を過ぎていたとしても、その後まとまった睡眠が確保できれば成長ホルモンはきちんと分泌されるからです。
成長ホルモンの分泌量は、入眠から3時間の間にピークを迎えます。就寝時刻がだいたい同じであれば、夜10時に眠りについていなくても大きな問題はありません。
とはいえ、夜更かしで生活リズムが崩れると、成長ホルモンの分泌量に良くない影響を与えるのも事実です。
健やかな髪を作る成長ホルモンの分泌を妨げないためにも、日付が変わる前に就寝する習慣がつくよう心がけれるといいですね。
睡眠の質が上がれば髪は生えてくる~自律神経~
睡眠以外にも、体内時計は自律神経の働きにも大きな影響を与えるとされています。
自律神経は交感神経と副交感神経の2つから成っており、それぞれ身体にとってのアクセルとブレーキに例えられます。
両者がバランスをとることで、私たちの円滑な生命活動が維持されるのです。
体内時計が狂って睡眠の質が低下すると、交感神経優位型(緊張型)になります。
交感神経ばかりが働くようになると血圧上昇作用によって血管の収縮が起こり、血行不良に陥ります。
血行不良は身体の様々な機能を阻害しますが、髪の毛に関してもこれは同じです。人間の身体は末端にあるほど栄養などが行き届きにくく、髪の毛は身体の最も外側にあるため、その影響は大きくなります。
髪の毛に栄養が行き届かないと、髪は十分に成長しません。
体内時計を整える方法
体内時計を正常に動かし、健やかな体を保つためには規則正しい生活が欠かせません。「食事」「睡眠」「運動」という3大要素はどれも重要で、どれか1つでOKというわけにはいきません。
それぞれ、生体リズムに合った最適なタイミングやポイントがあります。
【朝】
○毎日決まった時間に起きる
→体内時計のずれをリセットできるのは朝だけ。前夜の就床時間が遅くなっても、起きる時間はできるだけ一定に。
○6~7時に起き、起床後1時間以内に朝食をとる
→5時前後から血糖を上げるホルモン(コルチゾールやカテコラミン)が上昇。
6~7時に起き、1時間以内に朝食をとることで血糖を下げるホルモン(インスリン)の効率が高まり、少ないインスリン量で自律神経のバランスが整いやすくなる。体内時計も活性化し、運動効率もアップする。
○朝食には糖質とたんぱく質をセットでとる
→糖質をとると血中のインスリンが増え、そのシグナルによって時計遺伝子が動き、体内時計が調節される。
さらに、併せてたんぱく質をとるとインスリン様成長因子が分泌され、体内時計の針の調整につながる。
○朝食後~昼食前に軽い散歩をする
→ハードな運動は夕方のほうが適しているが(後述)、このタイミングで軽くウオーキングなどをすると血液中のブドウ糖がインスリンの作用で内臓や筋肉に取り込まれ、代謝が促進される。ダイエット中の人、高血糖が気になる人などに特にお勧め。
【昼】
○12時前後にランチをとる
→「BMAL1(ビーマルワン)」という、食べ物を脂肪に置き換える時計遺伝子の働きが最も鈍くなる時間帯なので、肥満予防に効果的。
○仕事中は90分ごとに休憩をとる
→24時間周期のサーカディアンリズムを16区分した90分周期で人間は活動している。
作業効率や認知・行動機能が活性化する周期も約90分。定期的にきちんと休憩をとることでより仕事の効率がアップする可能性大。
【夕方~夜】
○15~19時に有酸素運動や筋トレをする
→この時間帯が最も肺と心臓の働きが活発で、筋肉の柔軟性も高い傾向にあるため、ほとんどのスポーツにおいてベストタイミング。安全かつ効率的に体を鍛える効果が期待できる。
○夕食は18~19時にとる
→味覚が1日の中でも最も敏感で、消化も促進されやすいのがこの時間帯。夕方に運動する場合は、消化の良いおにぎりなどの軽食をとっておき、運動後に夕食を。
○アルコールを飲むなら20~21時に
→アルコールに対する抵抗力が最も高くなる時間帯。ただし健康のためにはアルコールはなるべく控えめにすることが大切。
○就床時間は日によってバラつきがあってもOK
→体内時計の調節のためには、寝る時間よりも起きる時間のほうが重要。
ただし、体内時計はもともと朝日を浴びてから約15時間以上経つと自然と眠くなるようにセットされているもの。できるだけ夜更かしは避け、早寝早起きの習慣を。
また、質の良い睡眠を得るためには、就寝1時間前くらいまでに入浴して体の深部体温を上げ、体温が下がってきたタイミングで眠りに就くのが効果的。
まとめ
規則正しく生活したいと思っていても、仕事や家事などさまざまな状況によって実行できないことも多いものです。
そうした場合には、1週間のうち1~2日だけでも上記のようなタイミングを参考にして、食事、睡眠、運動のリズムを整えましょう。
毎週同じ曜日に行うと、体内時計のずれをリセットしやすくなります。
こういった地道な行動が将来の薄毛や白髪の予防につながることでしょう!